日光浴と乾布摩擦
日光浴と乾布摩擦は同じ効果か?
現在、治療院から徒歩3~4分の場所に住んでいるが、この短い距離でも色々と考えることがあると実感した出来事があった。
その日は朝から気温が30℃を超え、半袖短パンから出ている手足が焼けるように痛く感じた。ちょうど、自律神経失調症の患者のことを考えながら歩いていた時、ふと「日光浴による刺激は、乾布摩擦と同じような効果をもたらすのではないか」と思いついた。同じく皮膚への刺激だからである。
しかし、少し考えを進めてみると、日光浴と乾布摩擦では刺激の経路が異なることに気づいた。
乾布摩擦が自律神経失調症に良いとされるのは、皮膚への刺激を通じて脳に信号が送られるからである。特に効果的とされるのは、絹などの摩擦抵抗が少ない素材で軽く擦るやり方である。この場合の刺激は「触覚」であり、脳へ伝わる経路は「触覚・圧覚・関節位置覚・振動覚」を伝える後索路である。
一方、日光浴の場合は、主に温度覚とそれに伴う痛覚が刺激になる。このため「温痛覚」が中心となり、脊髄視床路を介することになる。
昔、生理学の授業で学んだ内容をうっすら思い出した。以下の2つが記憶に残っている。
・鋭利な刃物で切られると冷たく感じることがある。
温度覚(温冷覚)と痛覚は同じ経路を通るため、痛みを冷たさと勘違いすることがあるのだろう。寒すぎたり暑すぎたりすると痛みが生じるのは、この経路が共有されているためである。
・痛みには慣れることがない。
痛みは生命の危機を知らせるものであり、慣れてしまうと危険だからである。痛みが強すぎると失神するのは、脳への過剰な刺激を遮断するためかもしれない。
これをまとめると、乾布摩擦と日光浴は刺激が伝わる経路が異なるため、同じ効果を期待するのは難しいだろう。
ただし、日光浴が痛みを感じるほどでなければ、温かく心地よい程度であればむしろ痛みをゲートコントロールし、悪い刺激にはならない。それどころか、日光浴によって生成されるビタミンDは慢性疼痛の緩和や鬱病予防に効果があるとされている。適度な日光浴は積極的に取り入れるべきである。
これらのことを、通勤(?)の3~4分間で考え、久しぶりに充実した朝を過ごすことができた。そして、昼食時に同僚の諸星先生に話してアウトプットをした。勉強は、ただ知識を詰め込むだけでなく、様々な情報を組み合わせて自分なりの考えを作り上げることが楽しいものだ。
最後に、皆さんに役立つ情報として、1日15~30分の日光浴で鬱病を予防し、1日10分程度の乾布摩擦で自律神経を整えることをおすすめする。